化学工学会の役割

総合工学として発展する化学工学

化学工学はまさに化学のための工学であり、合理的な化学プロセスの開発・設計・操作を目的とする学問として、20世紀になって急速に発展してきました。それまで経験に頼ってきた生産技術は、化学製品の急速な需要の増大に伴い体系化が進み、それを大きなバックボーンとして化学工学は発展してきました。 まず、化学プラントを構築するために必要な共通の操作、つまり分離を中心とする単位操作という概念が化学工学に生まれました。その後、反応工学、プロセスシステム工学が生まれ、これらを支える熱力学、移動速度論、反応速度論などの基礎化学工学へと体系化が行われました。 化学工学はよく化学を主とするプロセスの総合工学と言われています。すなわち、原料や製品はもちろん、エネルギー、環境、安全、資源、さらには法律、経済、社会までを総合的に考え、そのための手法を与える総合学問と言えるでしょう。そのため、化学のみならず、製鉄、金属精錬、繊維、プラスチック、紙パルプ工業、食品、医薬品などの各産業、さらに石油精製、原子力などのエネルギー産業などに化学工学が活用されています。さらに最近では、バイオプロダクトや電子材料、ニューセラミックスなどの新材料の生産、公害防止から地球規模までの環境問題の解決、新しいエネルギーや資源の開発など、化学工学はわれわれの生活に大きな貢献をしています。

本会の歩み

本会は1936年に化学機械協会として会員数162名で産声を上げ、1956年に化学工学協会さらに1989年に現在の化学工学会に改名し、現在に至っております。1953年には東海支部、1955年には関東支部と関西支部を開設し1987年に九州支部、1997年に東北支部、さらに1999年には北海道支部と中国四国支部が発足しました。これら7支部は本会の活動の大きな支えを担っております。さらに研究活動の担い手として2000年には部会を発足させ、現在14部会で活動しています。

本会の役割

化学工学の学術的水準の進展を支え、人材を育成し、それらの成果を社会に有機的に還元するための中心的学会として活動することが、本会の一番重要な務めとなっています。そのため、本会では日頃から産・学・官の垣根を取り払い、お互いに切磋琢磨し協力できるたくさんの場を提供しています。また総合工学として、多くの関連学協会との連携を進めています。このような活動を通じて、化学工学をはじめとする広い範囲の産業分野の研究や技術の開発の推進に積極的に取り組み、環境と調和した高度産業社会の構築のために重要な役割を果たしています。