vol.2021-01 (2021.5.18) | 学会本部活動通信

学会本部活動通信(会長メッセージ)

2021年4月15日
会長 石飛 修

一昨年来の新型コロナウイルス感染が続き、世界中で経済活動をはじめ様々な活動が制約を受ける中、教育研究活動や学会活動も制約されていますが、昨年来、みなさまのご協力を得て、化学工学会ではオンラインを多用化して対応してきています。時空を克服したWEBならではの利便性が有りますが、内容に依っては、オンサイトが待ち望まれるものもあり、ポストコロナでは、この時代を経て得た知見により、以前にも増して効果的な学会活動になる事を期待したいものです。

今年はビジョン2036策定の準備が本格化します。ビジョン2011では、21世紀に入り、情報化社会の到来と遺伝子工学の進展など現代社会は急激な変革の波が押し寄せ、かつ何と言っても地球循環系が損なわれるという危機感の下、持続可能な社会システムに向け、科学・技術の責任は大きいという時代認識から、化学工学会は化学工学の体系を「人間と環境に配慮したもの作りのための新しい工学体系」と標榜し、その実現に向け、様々な考え方や仕組みが作られました。ビジョン2023では、これを踏まえ、2036年までの中間点の2023年において化学工学のあるべき姿と、その実現のためのビジョンを提言しているのはみなさまも承知の事と思います。これらは的確な状況認識の下に、あるべき姿を明示したものです。
今年2021年を迎え、地球環境の厳しさは人類の想像を超えたものとなり、それに加え、自然界では新型コロナ禍の猛威、また、人類社会では格差問題が深刻になり、民主主義すら揺らいでいると言っても過言ではありません。こういう環境の激変の中で困難は多かろうと思いますが、札幌宣言の「Sufficiency」に満ちた社会を学会が目指すには、ビジョン2036作りの上でも叡智を持って臨まなければなりません。 一化学会社に長い間、身を置いてきた者として、日本の化学産業は、規模でも新しいプロセスや化学製品でも世界の最新技術から多くの後れを取り、忸怩たるものがあります。新しい地球環境問題の中で、産は物づくりから価値の創造に舵を切ろうとしており、新しいフェーズに入っております。学も過去のビジョンにあるように新しい工学を目指しています。 この地球環境問題への対応をはじめ、今、世界の化学産業は、これらの克服にほぼ同時にスタートを切っています。コロナ禍での対話の在り方も然りです。今こそ、学と産とが新しい社会を目指して、世界初の試みや技術で、この厳しい環境を乗り切るべく、互いの認識を一にして行動したいものです。