vol.3-2 (2014.11.4) | 学会本部活動通信

平成26年度会長
前 一廣

この通信では、学生会員、若手正会員各位に小職の想いをお伝えしたいと思います。

学生会員、若手正会員のみなさまへの独り言

現在、学生会員の方は、学会発表をする上で、各研究室の先生方からの薦めもあり、入会されている方が多いのではと思います。また、学生会員から正会員に資格変更された方は、卒業時に研究室にて、先生方からの要請もあり、資格変更されている方もあるかと思います。上記会員の方々の中には、化学工学会の会員であることの意義をそれほど感じておられない方もいらっしゃると思います。これまで長年に亘り、学会では、本部大会企画、会誌の充実、各種セミナーの開催など多様な情報発信に努力を重ねておりますが、個人会員としてのメリットを感じておられない方がほとんどかと思います。実際、小職の場合、修士課程を終了後、一旦、企業に勤め、学会活動から離れることとなり、化学工学会(当時、化学工学協会)を利用することも暫くありませんでした。就職1年目で結婚して、安給料(税込年収270万円で、現在と食品物価はあまり変わらず、逆にステレオは30~40万円と嗜好品は高価でボーナス1回でも買えない状況)での生活の中、会員をやめようと考えたこともありました。しかし、その際、「自身は化学工学という専門で就職できた」、「社内でも社外でも化学工学が専門ということで仕事を任され化学工学技術者と社会的に認知されている」ということを考えると、学会がなければ、自分の技術者としての社会的な保証もないということに気づき、会員を続けたことを思い出します。 学会というのは、総務省に認可を受けた日本の中での学問分野を担保する組織であり、これが存在することで、その専門分野が社会的に認知されるというわけです。現在、化学工学会に所属していない方が、「自分の現在の専門は化学工学です」と社外で言われる(社内はOKかと思います)のは、少しばかり罪悪感を伴う振る舞いであるように感じます。すなわち、自分の専門を担保する学会を維持する活動を他人に任せ、自分はその専門分野と云っているわけですから、少し倫理的に問題があると感じます。(大学の学位を持って「自分の専門分野は化学工学でした」と過去形でおっしゃるのは問題なしですが。尤も学会がなくなれば自分の出身母体の大学の化学工学関連分野も崩壊しますので、本当に過去形になりますね)。 さて、容易に想像がつくと思いますが、学会員の多い方が、自分の社会的存在の大きさも大きくなるのは自明です。ところが、現在、各学会とも同様の傾向ですが、当学会も年々正会員が減少の一途を辿っています。このままの減少でいくと、10年後には当学会そのものが機能しなくなるかも知れないと危惧しております(小職は若い時から悲観主義的ではありますが)。もしそのような事態になった場合は、みなさまの専門を保証するものがなくなり、また、みなさまが将来、管理職になられた頃に、化学工学を専門とする部下が入ってこなくなり、みなさまの仕事の成果に大きく影響を及ぼすのではないかと老婆心ながら心配しております。化学工学関連の仕事をされている方、これから化学工学を専門として就職し、仕事をして行かれる方は、是非、この点をご理解頂き、永続的に月800円の会費を納めて頂ければ有難く存じます。目に見えない形での正会員のメリットの実感はないかもしれませんが、各位の正会員維持の活動が、色々な側面で、各位個人の仕事を支えることになることをご理解頂ければ有難く思います。もちろん、学会としては、これまで以上に会員各位にメリットが出るような仕組みは考えていきます。 社会には数多くの職種、専門がある中で、化学工学という専門に身を委ね、自身の短い一生を過ごすわけですので、自身のこの世に生きた意義を少しでも高めるためにも、専門を保証する学会に愛着をもって支えて頂ければ幸いです。(勤務先、大学を超えて、会員若手で、SNSなどを介して情報交換し、化学工学仲間を増やして社会を突き進んで行って頂くことなどを期待しています。) 恐らく、学生会員、若手正会員へ、会長自ら、このように「学会の将来を」を切にお願いするのは、77年の歴史で初めてかと思います。小職が今回、会長に立った一番大きな理由は、化学工学の次世代を担う若者に色々な形で訴えかけ、今や希少価値となりつつある化学工学技術者(その候補生)のみなさまに、是非、力を合わせて自分たちの明るい将来を維持して頂きたいという思いからです。あと数年で引退する人間の最後の学会への寄与と考えての訴えです。何卒、化学工学のプロとしての意識のもと、学会を支えて頂ければと切に願っております。 追伸 小職、常日頃、「遺産相続はお金でなく、人でするべき」と考えています。お金を相続しても、お金のあるときには人は集まりますが、お金が無くなると人は立ち去ります。一方、人を相続すると、自身が困ったときに、必ず助けてくれます。学会とは専門を同じくする、この人の繋がりと先人や仲間の知恵を未来に亘って相続し享受し合っていく組織でもあると考えております。