HOME委員会活動男女共同参画委員会
女性会員からのメッセージ No.37

「甘えずに、気負わずに」

日揮(株)  稲木 千津

 


 これまでに執筆された、育児と仕事を両立しておられる先輩方の重みのあるメッセージを拝見し、子供もおらず好きなだけ残業している自分などにはたして書けることがあるだろうかと思いますが、引き受けてしまったものは仕方ありません。

 私は大学時代には応用化学科で触媒を専攻していました。研究開発の進め方、仕事への責任感から考え方のアプローチに至るまで、学生時代に学んだことは今でも私の仕事の礎となっており、それは触媒開発のみならず他の分野でも役立っています。
 
 卒業後はエンジニアリング会社(日揮)に拾ってもらい、触媒を中心としたプロセス開発をしてきました。入社してからずっと担当してきたテーマが、最初は触媒開発だったものが徐々にスケールアップしてきて、パイロットプラントを建設する段階にきています。この一連の仕事で、プロセス開発の流れを経験できたり、社内の他部署と協力したり、得るものは大きかったと思います。数年後に商業プラントを建てることが我々の目標です。
 

 現在は1年間の任期で、関係会社である触媒化成工業に研修に来ています。毎日好きな触媒の実験を思う存分して仕事の上では充実していますが、単身赴任をしているため、帰りたいような帰りたくないような複雑な心境です。
 
 プロセス開発といってもほとんど触媒担当、化学工学の知識は頼りない私が、化学工学誌の編集委員を上司から仰せつかり、その縁でこの原稿も書いています。分野違い・経験不足のため、編集委員の話は断ろうとしましたが、「専門以外の分野でこそ仕事をした方がいい。後で必ず役に立つから」との上司の言葉でお受けしました。編集委員会では力不足で色々とご迷惑も掛けましたが、確かに普段の業務では知りえない分野の方々とお会いできたことによって世界が広がりました。
 
 大学でも会社でも周囲に恵まれ、女性ゆえの差別を受けたことはなく、普段から女性ということを意識して仕事する必要はありませんでした。逆に、女性の数が少ないためか学会や会社ではよく顔と名前を覚えていただき、同じように仕事をがんばっていても男性よりも印象に残りやすく、何だか申し訳ないなあ、と感じたこともあります。

 女性だから云々という時代ではもはやなく、女性(少数派)であることを認識した上でそれに甘えず、力仕事などの苦手な所は手伝ってもらい、一人の人間として仕事をきっちりと仕上げるという時代になりつつあるのではないかと感じています。
 

 出産、育児に関しては、専業主婦の妻のいる男性に比べて、やはり時間的なハンデがあるのでしょう。学生のときには、育児をしながらの仕事なんて自分には無理だろうと思っていました。しかし毎日、目の前の仕事を納得いくまで進めていると、以前の自分よりもたくさんのことができるようになったな、とふと思うことがあります。いざそのような状況に置かれてみれば、きっとまたできることが増えるのではないかと、楽天的に考えています。力強い先輩方も数多くいらっしゃることですし。


【執筆者の紹介】


就労中の執筆者(前列中央)

稲木 千津(いなき ちづ)氏

<最終学歴>
 名古屋大学大学院工学研究科 
                 博士課程後期課程

<現 職>
 日揮(株)技術統括本部 技術開発部
 

(2007.9 掲載)