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女性会員からのメッセージ No.32
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いまここにいる理由

   東京大学  小竹 玉緒
 私の進路選択は、どちらかというと消去法で決めました。
まず、家庭の事情。二人の兄が文系に進んだので、私は理系へ。(家族で同業者なんて家庭不和のもと、と思っていました。)専門を絞りたくなかったので、東大の理科一類へ。さすがに東大の授業についていくのは大変でしたが、化学ならなんとか単位を取れるかな、と思い、工業化学科(現在の応化学科)へ進学しました。卒論の配属先は、あみだクジでハズレて、分析化学の研究室に決まりました。学部4年で就職活動をしましたが、院試に受かったので大学院に進学しました。たまたま実験がうまく進んでいたので、それ程深く考えず、(イヤになったら辞めよう、という軽い気持ちで)博士課程に進学しました。運よく3年で学位は取れました。その後、研究室に残って学振の特別研究員、助手を勤めた後、(財)神奈川科学技術アカデミーの研究員、徳島大学の研究員、群馬大学工学部講師を経て、昨年9月から現職に就きました。
 
 学生時代から分析化学を専門に研究してきました。もともと実験は嫌いではなかったので、一日中でも実験室にこもって実験していました。研究成果はそれなりに出て、分析化学の分野ではそれなりに良い雑誌に論文を掲載してもらえました。少なくとも学生時代の間は、勉学や研究の機会において、女性であることが不利であると感じたことはありませんでした。しかし、学位を取得していざ就職、という段になると、女性であることが就職を難しくすることを実感しました。私の名前(たまお)だけを聞いて、男性と間違って、面接だけしてくれたところもありました。ポスドクで各地を転々とした後、縁あって7年前に群馬大学工学部の講師として採用していただきました。
 
 任期付きのポスドクでなくなったことが、いちばん嬉しかったのですが、5年をメドに転出することが隠れた採用条件となっていました。早めに新しい成果を出さねばならないので、初めての土地、初めての人間関係、初めての講義など、初めて尽くしの中で、最初の1、2年は寝る間も惜しんで勤めました。友達や知り合いがほとんどいない土地では、さすがに精神的な疲れが取れにくく、週末は毎週のように実家の神奈川に帰っていました。しかし、群馬と神奈川の往復にも段々疲れてきて、「このままではいけない。生活を変えないといけない。」と思うようになってきました。
 
 今、4歳の息子がいます。保育園に通っています。送り迎えは夫の担当です。子育てしながら仕事を続けるには、周囲の理解と協力が不可欠です。家族の理解だけでなく、職場の理解も必要です。育児休業は法的には認められていますが、快く思っていない職場はまだあります。私たち女性が働きやすい職場をつくっていかねばなりません。
 
 実際、世の中は少しずつ変わって、子育てしながら研究・教育を続ける女性の大学教員 も増えてきました。ひとりひとり個性があって、好き嫌いや向き不向きがあります。下手の横好きなんて言葉もありますが、要は、自分がなにをしたいか、なにをしているときが幸せか、どんなことなら続けられるか、ということが、いろいろな選択の場での判断基準だった ような気がします。学生時代〜30歳くらいまではまだ体力があって、無理と思われることでもやってみよう!という気力があったような気がしますが、40歳を過ぎたこの頃は、無理なくゆっくり通り抜けられる近道を探すようになりました。
 
 恩師の紹介がご縁で、現職に就いて半年が過ぎました。これまでの分析化学の研究も細々と続けながら、安全管理という新しい仕事に従事しています。最後に安全衛生管理室の仕事を少しだけ紹介します。平成16年に国立大学は法人化し、人事院規則ではなく労働安全衛生法が適用されるようになりました。これまで大学では治外法権的に緩やかな管理が黙認されていましたが、企業並みの安全管理が要求されるようになりました。私の学生時代には、メタノールや塩酸、アンモニア水くらいなら普通の棚にいくらでも置いてありまし 別化学物質を取り扱う際には、ドラフトチャンバーなどの局所排気装置を使用しなければ なりません。また、局所排気装置を設置・移動する際には、30日前までに所轄の労働基準 監督署への届出が必要ですし、特定毒物や動物の麻酔に使われる麻薬・向精神薬を使用する場合も、都道府県や地方厚生局への届出が必要です。これらは会社では周知のことですが、現在、指導的な立場にいる大学教員は、法人化前に学生時代を過ごしたせいか、このような「きまり」をよく知らないことが多く、私の仕事はまったく減る傾向にありません。
 
 

小竹 玉緒 (こたけ たまお)氏
東京大学工学系等安全衛生管理室 特任准教授

(最終学歴:東京大学大学院工学系
              研究科応用化学専攻)

E-mail:t-odake@t-adm.t.u-tokyo.ac.jp

 

 

(2007.4 掲載)  

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