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今だから考えること |
東京工業大学大学院 脇 慶子(温 慶茹)
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私は十数年前に台湾からの留学生として研究生活をスタートしましたので、男女共同参画あるいは女性研究者という立場よりも、留学生という立場のほうが当時の自分の姿を振り返ることができます。研究の環境は当時も今も変わらず男性の世界ですが、それに対しての抵抗はあまりなく、それよりも自分は日本人の中の外国人だという意識の方があったように思います。そのころは研究が中心の生活でしたので、私自身が男性と同じように振舞っていました。一方で日本人の女性とお付き合いする機会はほとんどなかったため、どのように振舞ったらよいのかあまり知りませんでした。何ら意識せずに日本人の女性と友人の関係を築けるようになったのは、その後10年近く経ってからです。
ところで修士課程の実験で毎日徹夜をしていたとき、先輩から“こんなことは女の子のすることじゃないよ”と言われたこともありました。私は男女差別として憤慨するどころか、それを素直に先輩の思いやりとして受け止めていました。このように私は男女の違いには敏感でなかったというよりも、あまり関心がなかったのだと思います。若いときは本当に自分のことしか頭になく、周りの人が自分をどう思うかなど気にすることもありませんでした。ある意味で大変恵まれた環境であったのかもしれません。博士課程に進学する頃、ようやく女性も含めた周りの人に対して自然に振舞うことができるようになってきましたが、それは当時の恩師から後輩の面倒を任せられたことがきっかけでした。自分の世界に閉じこもるのではなく、後輩たちとも関わる中で人間的に成長することができたと思っています。
現在は自分の研究室を持ち、10人ほどの学生と毎日関わり合いながら学問の探求に邁進しています。とくに今興味を持っていることは異なる物質同士が接している界面の特性についてです。実際の物質の表面や界面は理想状態とは大きく異なりとても捉えにくいものですが、本質を見抜くことができれば面白いほど理解が進み、また実験結果を予想でき再現性が得られるので大きな感動を味わうことができます。私は昔から勉強よりも考えることの方が好きでした。考えてもよくわからないことを考え続けていたことが、今日私が研究を行う上で原動力になっているような気がします。最近は、研究以外ではあまり自分のことについてあれこれと考える時間がなくなったためか、周りのことがよく目に付くようになりました。無責任な親に放任される子供達のこと、人間の気ままな都合により捨てられる動物達のことなどがとくに気に掛かります。これまでの研究生活を通して得た経験や自信、女性特有の感性を持って、研究の世界を超えて何か社会に貢献することができないかと考えています。
以上、これから工学の分野で頑張ろうとしている女性研究者の方々にとってあまり参考にはならないかもしれませんが、自分が正しいと思ったならその道を曲げずに進むこと、人や自然を思いやること、出会いを大切にすることが現在の私がもっとも大切にしていることです。
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脇 慶子(温 慶茹)
(わき けいこ(うえん けいじゅ))氏
東京工業大学大学院総合理工学研究科 助教授
(最終学歴:東京大学大学院工学系研究科
化学工学専攻)
e-mail address: waki.k.aa@m.titech.ac.jp
URL:
http://www.es.titech.ac.jp/waki/index-j.html
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| (2006.12.26 掲載)
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