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女性会員からのメッセージ No.23
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計測法を開発し、未知の現象の解明に挑む

東北大学多元物質科学研究所 栗原 和枝

 現在私は大学の中の研究所(附置研究所)で研究や学生の指導を行っています。専門はコロイド・界面化学,分子組織化学です。具体的には、表面力測定という相互作用の精密測定法の開発とその手法を用いて分子組織体や固−液界面の特性を研究しています。高分子,生物物理そして材料設計まで幅広い領域と接点のある複合化学とも言える研究領域です。
 高校生の時には文系志望でしたが,両親が「女子も手に職をつけるべき」という考えでしたので,理系に進学しました。最初は,理系の勉強をして,その当時の新しい職業であるサイエンスライターにでもなれたらという教養的な意識でしたが,実験・研究と進むうちに段々面白くなって現在に至っています。高校は男女比が約4:1という、旧男子校の進学校を卒業しました。その高校の先生にはわずかですが、共学になってレベルが下がったとおっしゃる先生もいらしたので、何となく女子大に進学しようという気持ちになりお茶の水女子大学の化学科に進学しました。そのうち研究が面白くなり、結局、東京大学工学系研究科の工業化学専攻の博士課程に進学し、東大の応用化学系では7人目の女子学生になりました。当時(昭和40、50年代)は、女性が大きな国立大学で教授になるという例はほとんどなく、私自身も将来どういう形で研究をするかという可能性を考えるより、研究することが好きで続けてきた気がします。幸い、世の中が段々に変わってきて、自分で研究室を主宰できるようになりました。女性○○の第1号という機会も何回か与えていただきました。
 研究のおもしろさ・楽しさは色々ありますが,私にとっては、自分の考えに基づき具体化していく時の“なぞ解き”にも似た興味と、そして具体化の仕方はそれぞれの研究者により異なるので自己表現とも言える部分が大きいかもしれません。また,世界中の人達と過去・現在・未来の時間を共有しながらキャッチボールできることも幸せだと思います。現在はもう直接実験をする時間がなく寂しい限りですが,データをとる時のわくわくする気持ち,またデータが揃って結論が出せた時のスカッとした喜びと次への期待など,研究をする人たちなら皆が経験することだと思います。
 学生時代から40才すぎまでは分子組織体を用いたバイオミメティックな材料設計の研究をしていましたが,扱っている系をより深く理解したい,また研究の基礎としていた物理化学をより生かせるテーマにシフトしたいと考え,現在の研究テーマである表面力測定を開始しました。最近、京都で博士研究員をしていた研究室の大学院生だった人と話をする機会がありました。私の研究室のホームページを見て、当時「こういう研究をしたい」と話していたことをやっていますねと言ってくれました。テーマを表面力測定にシフトした頃に名古屋大学の応用物理学科に赴任し,学科の機械工作室の支援を得て装置も少しずつ製作するようになりました。テーマを大きく変えた事は大変でしたが,研究対象としてはそれまでに扱っていた分子組織体を対象とすることで表面力測定の研究に新しい展開を導くことができたと思います。表面力測定も最初に手がけてからはすでに20年近くになりますので、装置製作や計測法の開発にも腕が上がってきました。何事も継続は力だと思います。
 名古屋大学で助教授となるまでは(42才でした)、合計5年間の外国での研究生活を含め色々な場所で流動研究員として研究をしていました。テーマも少しずつ違いましたが、自分自身の興味との接点を考えることで連続性のある研究ができたのではないかと思っています。大学でポストを得るには、その直前にJST(現在の科学技術振興機構)のERATOという5年のプロジェクトのグループリーダーとして、まとまった研究成果をあげることができた点が大きいと思い、そういう機会を得られたことに感謝しています。当時は、終身雇用の職に就いておらず色々な所に引っ越しをしながら研究をすることを大変だと思っていました。しかし、今になって思うと、非常に幅広い分野で経験を積めたことは財産ですし、日本の色々な場所に昔の同僚がいて、大変心強く思います。最近は、男女を問わず研究職の流動化推進が議論されていますが、その先がけとなる経験ができているかもしれません。
 大学で研究をしていると、学生が研究室に来ては卒業していきます。研究テーマは尺取り虫のようにしか進まない時もありますが、若い人達と一緒に研究を進めるのは楽しいですし、調子に乗ると思いがけないほどすばらしいデータを出すな

研究室メンバーとともに片平キャンパスの桜の木の下で(前列中央が筆者)

栗原 和枝(くりはら かずえ)氏
東北大学多元物質科学研究所 教授
(最終学歴:東京大学大学院工学系研究
  科工業化学専攻)
e-maill address: kurihara@tagen.tohoku.ac.jp
(2006.8.11 掲載)  

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