化学工学のHPに投稿、というお話を頂いたとき、正直迷いました。現在の私の仕事は、マーケティングの企画のための“ヒト”の研究であり、自然科学を研究することではなくなっているからです。
けれども、これまでに色々な経験を積み、自分の幅を広げたからこそできる仕事、その充実感を感じる今だからこそ、皆さんへのメッセージを伝えたいと思い、お引き受けすることにしました。
私が学生だった頃、まだ理系の女性は少なく、特に出身の東京大学工学部の化学工学科では、女性は2人目でした。周りは男性ばかりでしたが、「問題を解決するアプローチを学ぶ学問」に惹かれた私。卒論も、もともと教授が提示していた内容ではない"環境関連“の研究に取り組みたいと訴え、『水俣湾の水銀の動態』というテーマで、修士課程まで進みました。この間、水俣病研究センターの赤木先生のお宅に居候しながら、プランクトンのサンプリング、分析法の検討など、素晴らしい周囲の環境の中で、大学の外に出ての勉強もさせて頂きました。赤木先生ご夫婦の互いを尊重する生き方にも感銘を受け、それまで何となく自分に自信がなかった私でしたが、「ありのままの自分」を出すことを恐れなくなりました。今思えば、人生のターニングポイントの一つだったと感じます。
“環境派”を自認していた私は、現在の「ライオン」という会社に入社することに少しためらいがありました。でも、自分の作ったものが、市場で皆さんの手に渡るその“ときめき”を感じたくて、また、どうせなら会社の中から、環境に良いモノづくりを自ら進めたいとも(ちょっとだけ)思い、入社を決めました。
化学工学出身でしたから、配属先は「プロセス開発センター」。ただし、スケールアップのみならず、新規技術開発にも力を入れていた部所で、入社しての最初のテーマは「カプセル化技術」でした。毎日顕微鏡を覗きながら、カプセルを作る条件検討と保存安定性評価を繰り返す日々。ちょっと変わった先輩もいて、「自分とは異なる価値観をもつ人の存在」を痛感しました。ストレートに批判を真に受けるのでなく、少しかわしながら、やや客観的に意見を聞くことで、ストレス耐性を習得しました。(コレ、結構大事なことだったと思っています)
社内の提案制度を利用した提案がテーマ化したことや組織変更、社内結婚が重なり、3年目に無機材料の研究室に、7年目には油脂の研究室に異動、この間に
2人の子供を出産しました。主人の母と同居していたこともあり、産休とフレックスタイム制度を活用して、3年間をやりくり。より自分に合った仕事を求めて人事担当に直訴、9年目にファブリックケア研究所に異動しました。
ファブリックケア研究所では、洗剤や柔軟剤、漂白剤といった衣料用の商品を開発しており、ここで10年間、洗剤開発に携わることになりました。業務で成果が認められにくい時期にも、「消費生活アドバイザー」「繊維製品品質管理士」「危険物取扱い主任」などの資格を取得、少しずつ自分磨きに取組みました。この10年間に、共著論文として6報を発表、また、洗濯前処理剤「プレケアシリーズ」や、「部屋干しトップ」の開発を進め、自分の開発した商品が売れる“楽しさ”を実感したり、TV出演を含めた色々な場で、開発した商品を生活者に伝える貴重な経験ができました。

2年前、新設された「生活者行動研究所」に異動となり、現在は魅力ある新商品の開発のためのニーズ探索、商品企画初期段階における仮説構築・検証を実践しています。ニーズとシーズのマッチングが重要課題と認識し、自分でもグループインタビューなどのインタビュアーをこなしつつ、コンセプト開発に取り組んでいます。技術のわかるマーケッターとして、「今の私だからできる」商品開発を進めたいと考えています。
まだまだ新しいことにチャレンジしたい気持ちが尽きません。これを機会にまた、色々な方と出会えたら素敵!と思っています。女性視点をもった技術者の活躍を心から期待しています。
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